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IT業界の片隅で生き残るブログ

6.キースイッチ取り付け【手配線で自作キーボードを作る講座】

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この記事は、【手配線で自作キーボードを作る講座】の第6回目です。

そのほかの記事はこちら↓

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キースイッチ取り付け

筐体のプリントアウトが完了したら、キースイッチがきちんとはまるか確認しましょう。

スイッチ用の穴が小さすぎて入らない場合

多くの場合、穴が小さすぎて入らないキーがあると思います。

14mmちょうどで設計した場合、3Dプリンターの特性にもよりますが、素材の収縮などにより14mmよりも小さくなり、キースイッチが入らないことがあります。 この場合、ヤスリやカッターで穴を広げ、スイッチが入るよう調整します。

調整しても入らない場合、モデルを修正することを検討しましょう。 14mmよりも少し大きい穴に修正して、プリントアウトしなおしてください。

スイッチ用の穴が大きすぎる場合

あまりにも穴が大きく、スイッチがぐらついたり、意図した位置に配置できない場合は、モデルを修正しましょう。 スイッチが抜けやすい程度であれば、グルーガンで固定する方法もあります。

※ただし、後述のキー配列の確認を済ませてから固定するようにしましょう。

キー配列の使用感を確認する

キースイッチを取り付けたあと、キーキャップも取り付けて、試し打ちしてみましょう。

狙った通りの使用感になっているかを確認して、問題があればモデルを修正しましょう。

キー配列、キースイッチの打鍵感、キーキャップの形状は、自作キーボードの使い勝手に大きく影響する要素です。 しっかりと確認して、納得のいくものにしていきましょう。

そのほかの確認事項

はんだ付けを始めてからは変更が難しくなるため、今のうちに以下の点を確認しておきましょう。

  • 筐体の反りは許容範囲か?
  • ProMicroをきちんと取り付けられるか?
  • 3.5mm ジャックは取り付けられるか?
  • すべての部品を取り付けた状態で、筐体のフタをすることができるか?
    • 部品が干渉して、フタが閉まらない場合があります。
  • フタをネジ止めすることはできるか?
    • ネジ穴が小さい場合は、ドリルなどで少し穴を広げてやりましょう。無理にネジ止めしようとすると、筐体が割れる可能性があります。
  • 配線するスペースは十分にあるか?

今回は3Dプリントの影響で、3.5mm ジャックを取り付ける穴が小さかったため、やすりで穴を拡張しました。

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実際に取り付けたところ

取付中。今回もやはり穴が小さく、やすりとカッターで削りながらの作業でした。

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全部とりつけました。次はいよいよ配線です!

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5.筐体のプリント【手配線で自作キーボードを作る講座】

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この記事は、【手配線で自作キーボードを作る講座】の第5回目です。 そのほかの記事はこちら↓

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3Dプリンターでプリントする

個人で所有できるような小型の3Dプリンターでも、自作キーボードの筐体程度であれば十分プリント可能です。

左右分割型の場合は片手分ずつプリントすれば良いでしょう。 一体型で3Dモデルが大きい場合、まずはモデルをある程度分割してプリントし、後から接着剤などで接着することになるでしょう。

3Dプリンターには FDM(熱溶解積層方式)や SLA(光造形方式)などの種類がありますが、一般的に安く手に入るのは FDM のプリンターでしょう。 FDMの3Dプリンターはコストパフォーマンスに優れ、造形物の強度も十分なので、自作キーボードの筐体にはもってこいです。

ただ、 FDM でプリントアウトした造形物には積層痕が残り、あまり滑らかな出力結果になりません。 筐体のような大きな造形物では問題になりませんが、キーキャップなど、細かさや滑らかさが重要な部品には、SLA のプリンターのほうが適しています。

プリントのコツ

フィラメントは、PLAフィラメントを選択するのが無難です。 キーボードのように平たい造形物の場合、ABSでは"反り"が大きすぎてきれいにプリントできません。 PLAの造形物は加工が大変ですが、ヤスリで削る程度であれば何とかなります。

Infill(内部埋め)は30%~50%くらいがおすすめです。 あまり内部を埋めすぎると、反りがひどくなったりするので注意が必要です。

プリント時の設定は、3Dプリンターの機種やスライサーソフトによっても大きく変わってきます。 あくまでも参考程度にしてください。

プラットフォーム(ベッド、ステージ)への接着が弱い場合は、個人的にはマスキングテープを張るのがおすすめです。 もちろん専用のプラットフォームシートや、定番の強化ガラス+ケープなどでもOKです。 マスキングテープは3Mの幅広のものを購入するとよいでしょう。

プラットフォームから造形物が剥がしづらいときは、ニトムズのテープはがしカッターがおすすめです。 スクレーパーなどよりも断然剥がしやすいです。

ニトムズ テープはがしカッター T087

ニトムズ テープはがしカッター T087

3Dプリンターでのプリントは結構慣れと経験が必要なので、試行錯誤を繰り返して頑張ってください。

3Dプリントサービスで発注する場合

価格の安さを求めるならナイロン素材、強度や実用性を高めるならMJF素材での出力になると思います。

3Dプリントサービスで発注する場合、避けたいのは 「発注後に設計ミスが見つかる」 パターンです。 これを避けるためには、3DCAD上で十分チェックするという手もありますが、 おすすめしたいのは個人所有の3Dプリンターでプロトタイプをプリントして確認するという手段です。 きちんとキースイッチがはまるか? 思った通りの形状か? など、実際にプリントしてみないと確認できないことは多々あります。 最終的に3Dプリントサービスに発注する場合でも、安い素材や個人の3Dプリンターでプロトタイピングすることをおすすめします。

実際のプリント結果

今回は緑色のPLAフィラメントでプリントしました。

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フィラメントはこれ↓です。

前述のとおり、3Dプリンターでのプリントは結構慣れと経験が必要です。 自分の3Dプリンターにあった設定を探して試行錯誤してみてください。

次の記事:

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4.筐体の3Dモデル作成【手配線で自作キーボードを作る講座】

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この記事は、【手配線で自作キーボードを作る講座】の第4回目です。 そのほかの記事はこちら↓

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Fusion360のインストール

本講座では Autodesk 社の Fusion360 を使用します。 こちらは ¥60,480/年 の有料アプリケーションですが、趣味での工作(非商用利用)やスタートアップ企業であれば無償で利用できます。

詳しくは Autodesk 社の Web サイトを参照してください。 オンライン CAD/CAM 設計ソフト | 無償体験版とダウンロード | Fusion 360

上記のURLからインストーラをダウンロードし、インストールしてください。

Fusion360の入門について

自作キーボードのモデリング程度であれば、難しい機能は使わなくても、Fusion360の基本的な操作ができれば大丈夫です。

この講座では、Fusion360の使い方などについては特に触れません。別途、入門記事などで学習しておいてください。

入門には、以下のチュートリアルPDFがおすすめです。 このPDFを一通り体験すれば、ある程度操作できるようになります。

Fusion 360 チュートリアル

Fusion360の最初の設定

基本的にそのままで良いのですが、1点だけ変更しておいたほうがよい設定があります。

Fusion360の初期設定では平面部分がxz軸、高さ方向がy軸となっていますが、 3Dプリンターでは平面部分がxy軸、高さ方向がz軸であることが多いです。 そのままモデリングしていくと、3Dプリント前にモデルを回転させる必要が出てくるので、最初に変更しておいたほうが無難です。

画面右上のユーザー名をクリック>基本設定を選択して、設定画面を開きます。 「一般」の「既定のモデリング方向」をZ(上方向)に変更します。

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この状態でモデリングすれば、違和感なく3Dプリンターで使用できます。

3Dモデルを作るにあたって

最終的には自分の好きなようにモデリングすればOKですが、前提知識として以下のことは知っておきましょう。

  • キースイッチ取り付け用の穴は、一般的には14.0mmの正方形
  • キーピッチ(キーとキーの間隔)は一般的に19.0mmか19.5mm
    • したがって穴と穴の距離は5.0mmか5.5mm
  • ProMicroのサイズは個体差があるが、以下の通り
    • 幅18.5mm, 高さ34mm、厚み2mm
    • これは基盤部分の大きさ。実際にはmicroUSBの差込口などがあるため、もう少し大きい。
    • 定規やノギスで実寸を測ったほうが確実です。
  • PLA素材で3Dプリントする場合、筐体の厚みは2mm程度で大丈夫
    • ぶ厚いほうが重くなるので使用時に安定しますが、プリントアウト後に微調整するのが大変になるので注意。

モデリング

今回作成する、4x7左右分割キーボードの筐体をモデリングしていきます。 まずは右手用の筐体を作成して、左手用は右手用をコピーして作成します。

メイン部分の箱を作成

箱型を基本として、筐体のメインとなる部分を作っていきます。

今回は4x7の格子配列なので、サイズが簡単に割り出せます。 前述のとおり、キースイッチ取付穴は14mm、穴と穴の距離は5mmとします。 両端も同じく5mmの余裕を持たせるとすると、

  • 縦:(14*4) + (5*3) + 10 = 81mm
  • 横:(14*7) + (5*6) + 10 = 138mm

となります。

スケッチでこのサイズの長方形を作成します。 また、ProMicroを設置するための場所も必要なので、別途スケッチしてスペースを作ります。 スケッチできたら、「押し出し」ツールで押し出してベース部分を作ります。

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この状態で「シェル」機能を利用して、厚さ2mmになるようにくり抜きます。

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くり抜いて箱状になりました。

キースイッチ取付の穴をあける

次に、キースイッチ用の穴をあけていきます。箱の端から5mmの位置から、14mm × 14mmの正方形をスケッチします。 その後、矩形状パターンを利用して、ピッチが5mmになるように等間隔で配置します。

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押し出しツールで穴をあけます。

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キーボードっぽくなってきました。

少し穴を調整します。 多くのキースイッチには、穴から抜けにくくなるようにツメがついています。このツメは厚み1.4mmの板に嵌めることを想定しています。 今回の筐体は厚みが2mmなので、このツメが引っかかりません。ツメが引っかかるように、ツメの部分だけ1.4mm未満になるように削ります。

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以降もスケッチと押し出しツールを使って筐体を作っていきます。

ProMicro取付場所を作る

ProMicroの取付場所と、MicroUSB端子用の穴を作ります。

ProMicroの取付方法はいろいろ考えられますが、私は下のような形状にしています。

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穴の左右に固定用の出っ張りを作り、反対側の端も同じ高さになるように出っ張りを作っておきます。 穴側の出っ張りに差し込んだ後、グルーガンで固定します。

3.5mmジャック用の穴をあける

3.5mmジャックの部品に合わせて穴をあけます。

今回は5mmの穴をあけ、高さ調整用に少し出っ張りも作りました。

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フタ固定用のねじ穴作成

フタを固定するためのねじ穴を作成します。

スケッチと押し出しツールで、円柱とねじ穴を作成します。また、補強のために円柱には支えを追加します。

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ねじ穴の位置は筐体の位置に左右されますが、なるべく外側が良いでしょう。 場合によっては4隅+中央など、強度を考慮した位置にねじ穴を作ると良いでしょう。

フィレットツールで角を丸める

ある程度形になったら、フィレットツールで角を丸めておくと、見た目が整って良いでしょう。

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フタの作成

メイン側が完成したら、フタを作っていきます。

メイン筐体の穴をふさぐように、フタのスケッチをしていきます。

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フタがずれないように、高さ1mm程度のフチを作っておきます。

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ねじ穴を作成していきます。 メイン筐体のねじ穴との距離が0mmになるように、高さを計算して円柱を作成します。少し大きき目に作成したほうが良いでしょう。 今回はかなり大きめに作り、面取りツールを使って丸めました。

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底面側から、ねじを通すための穴を円柱を貫通するようにしてあけます。 また、ねじの頭が隠れるように、深さ2mm程度の穴をあけます。この穴は円柱を貫通しないようにします。

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これでフタは完成です。

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左手用筐体をミラーで作成する

基本フィーチャの「ミラー」ツールを使って、左手用の筐体を作成します。

下の画像のように、右手側のボディをすべて選択し、ミラーツールで左右反転したものを作成します。

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フタもおなじようにミラーを作成すれば、左手用の筐体も完成です。

完成後の筐体

完成した筐体の全体像です。

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今回はこれで完成ですが、実際には何度も微調整を繰り返しながら作成することになるでしょう。 3DCAD上ではうまく作れていても、実際に3Dプリンターで印刷するとうまく印刷できないこともあります。 試行錯誤しながら、オリジナルの筐体を作り上げてください。

次の記事:

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3.部品集め【手配線で自作キーボードを作る講座】

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この記事は、【手配線で自作キーボードを作る講座】の第3回目です。 そのほかの記事はこちら↓

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部品をどこで買うか?

基本的にはすべてネットショップで購入するのがそろえやすいと思います。 東京近郊にお住いの方は秋葉原遊舎工房さんの実店舗がありますので、そちらに足を運んでみるのもよいかと思います。

おすすめの購入元

  • TALP KEYBOARD
    • ProMicro互換機、ダイオード、キースイッチ、キーキャップがそろいます。
    • AliExpressと比べるとさすがに高いですが、発送が早く、国内配送なので安心感があります。
  • 遊舎工房
    • ProMicro互換機、キースイッチ、キーキャップなどがそろいます。
    • 珍しいキースイッチや、アクセサリー類なども充実しています。
  • AliExpress
    • 中国版の楽天みたいな感じです。
    • ダイオード以外をAliExpressで買うと一番安く収まると思います。
    • いろいろなショップ(出品元)があります。ショップによっては発送されない・不良品が届くなどのトラブルが発生する可能性があります。リスクを理解した上で利用してください。
    • KBDfansという出品元はキーボード関連の商品を多く取り扱っているようです。
  • ebay.com
    • アメリカ版の楽天みたいな感じです。
    • こちらにもKBDfansが出品しています。トラブルの時、AliExpressよりはebayのほうが対応しやすいように思うので、こちらで買うのもありだと思います。
  • 秋月電子
    • ダイオード、はんだ付け道具、配線用ケーブルなどが購入できます。
    • 3.5mm 4極ミニジャック 基板取付用 MJ-4PP-9 はここで購入できます。
    • 安く揃えるなら以下がおすすめです。
      • 高速スイッチング・ダイオード 1SS178(100本入)
      • 半田ごて:ニクロムはんだこて KS-30R(30W)
      • 半田:はんだ 0.8mm SD-62
      • こて台:はんだこて台 ST-11
      • ケーブル:スズメッキ線0.6mm、耐熱電子ワイヤー2m×7色
  • Amazon
    • キーキャップ、半田付けの道具などが購入できます。
    • RepRap Prusa i3など、自分で組み立てるタイプの3Dプリンターも比較的安く手に入ります。だいたい20000~30000円くらいです。
  • ホームセンター
    • 銅線、ネジなどが購入できます。
    • ネジなどは10本100円程度で小売りされているので便利です。ネットで買うとどうしても100本単位とかになってしまうので、必要な分だけホームセンターで購入するのが良いでしょう。

必要な部品

ここで紹介するのは3Dプリンターで筐体を作るときに必要な部品です。

ProMicroまたはその互換品×2

  • おすすめのショップ:TALP KEYBOARD、遊舎工房、AliExpress
  • 予算:約1200円(約600円×2)

自作キーボードの多くは、ProMicroの互換品を使用しています。 キーボードとして動かすための定番ファームウェアとして QMK Firmware があり、広く利用されています。 事実上の標準となっているので、特に理由がなければ ProMicro + QMK Firmware を利用するのがよいでしょう。

本講座の作成でも、ProMicro 互換品を用います。左右分離型のため、2つ購入します。 今回はTALP KEYBOARDさんで購入しました。

talpkeyboard.stores.jp

ダイオード(1N4148または1SS178)

  • おすすめのショップ:秋月電子、TALP KEYBOARD
  • 予算:約100円

複数キーの同時押しを可能にするために、ダイオードが必要になります。

入手のしやすさから、1N4148か、1SS178がよく使用されます。

個人的には 1SS178 が安くておすすめです。1N4148の半額で購入できます。 今回は秋月電子さんで 1SS178 の100本入りを購入しました。

akizukidenshi.com

Cherry MXキースイッチ、またはその互換スイッチ

  • おすすめのショップ:TALP KEYBOARD、遊舎工房、AliExpress
  • 予算:約2700円(約45円×60キーの場合)

自作キーボードでは一般的にメカニカルキーボード用のキースイッチが使用されます。

FILCOなどの高級メカニカルキーボードで使用されるCherry社のキースイッチか、その互換スイッチを使用することになります。価格の点から、互換スイッチが採用されることが多いです。

互換スイッチとして有名なのは Gateron と Kailh の2社です。 この2社のスイッチは品質もよく、使用感もCherry社のキースイッチと似ています。 ぜひいろいろなキースイッチを試して、お気に入りのキースイッチを探してみてください。

今回作成するキーボードでは、遊舎工房さんで Kailh BOX スイッチ(赤軸) を購入しました。

yushakobo.jp

軸の色について

Cherry社および互換スイッチにはいくつか種類があり、それぞれキースイッチの軸部分の色が異なっています。 それぞれスイッチを押したときの重さ、クリック感の有無などが異なり、キーボードの使用感に大きく影響します。

たとえばCherry社のキースイッチで有名なのは以下の4種類です。

  • 青軸
    • クリック感が強く、カチカチと大きな音がする。(タクタイルスイッチ)
    • ゲーミングキーボードなどによく採用される。
    • 音がかなり大きいため、使っていて楽しい軸。反面、オフィスなどで使用するのはあまりお勧めできない。
  • 茶軸
    • 軽いクリック感があり、カチっと小さな音がする。(タクタイルスイッチ)
    • 標準的な軸とされており、利用者が多い印象。
  • 赤軸
    • クリック感がなく、一定の重さでキーが沈む。(リニアスイッチ)
    • 青・茶よりも静穏性に優れる。クリック感がない分、茶軸と比べると軽く感じる。
  • 黒軸
    • クリック感がなく、一定の重さでキーが沈む。(リニアスイッチ)
    • 赤軸よりも重い押し心地で、重厚な使用感。底までキーを押し込むには結構力がいる。
    • その重さから最後までキーを押し切らずに使用する、いわゆる「なで打ち」で使用する人が多い印象。

Gateron や Kailh でも、これに準じた互換スイッチが販売されています。 大型のパソコンショップではFILCOのキーボードなどが展示されていることがあり、実際に使用感を確かめることができますので、心当たりがある方は一度試してみることをお勧めします。 そのようなショップが近くにない方は、どのメーカーでもいいので、最初は茶軸か赤軸を選択するのが無難でしょう。 またネットで調べると、クリック時の軸の重さも具体的な数値(45g、50gなど)のデータがありますので、参考にするとよいでしょう。

キーキャップ

  • おすすめのショップ:TALP KEYBOARD、遊舎工房、AliExpress
  • 予算:約3300円(DSA単品売りで、約55円×60キー)

キーキャップにも様々な形、色、素材があり、自作キーボード向けのセットなども多数販売されています。 よく使用されるのは DSA と呼ばれる形状のキーキャップですが、通常のキーボード向けのキーキャップでも大きな問題にはなりません。 ただ、自作キーボードは配列を通常の配列から変更することが多いため、キーキャップの印字と実際のキーが異なる、という状態になりがちです。 そのような状態が気になる場合は、無刻印のキーキャップを選ぶようにしましょう。

今回は TALP KEYBOARD さんでDSAプロファイルのセットを購入しました。 ※もう販売されていないようですが、同じようなセットが売られています。

配線用の銅線

手配線するための銅線が必要です。

おすすめはスズメッキ線と、協和ハーモネット株式会社の耐熱電子ワイヤーです。

スズメッキ線ははんだ付けがしやすく、初心者にもおすすめです。価格が安いのもメリットです。 ただ絶縁の被膜がついてないので、取り回しが少し面倒です。 銅線同士が接触してしまうような箇所には、被膜がついた線を使いましょう。

今回は秋月電子で以下の2つを購入しました。同じような商品がAmazonでも購入できます。

3.5mm ステレオオーディオケーブル

  • おすすめのショップ:Amazon、100円ショップ
  • 予算:約100円(100円ショップ)

分割キーボードの場合は、左右のキーボードを接続するためのケーブルが必要です。 自作キーボードでは、オーディオ用の3.5mmステレオミニケーブルがよく使用されます。

安く済ませたい場合は100円ショップで購入するのがおすすめです。 Amazonなどのネットショップでは、いろいろな見た面のケーブルが売っていますので、それらを購入するのも良いでしょう。

あまり長すぎると逆に使いにくいので、30cm~100cmくらいのものを選びましょう。例えばこのケーブルは60cmなので、ちょうどよさそうです。

Amazonベーシック ステレオミニプラグ オーディオケーブル 0.6m

Amazonベーシック ステレオミニプラグ オーディオケーブル 0.6m

今回の講座では、ほかのキーボードで使っているものを使いまわすので、新しく購入はしませんでした。

3.5mm ミニジャック

オーディオケーブルを接続するためのジャックが必要です。 こちらは秋月電子などの電子部品専門店などで入手できます。

ジャックには、基盤取付タイプのものと、パネル取付タイプのものがあります。 手配線(空中配線)の場合、どちらの種類でも使用できますので、安いほうを選んだのでよいでしょう。

おすすめは以下の商品です。

今回は、以前に秋月電子で購入した以下の部品を使用することにしました。 ※ほかの自作キーボード用に買ったので4極ですが、実際には3極(ステレオ用)のもので大丈夫です。

ネジ(筐体のフタ固定用、ProMicro固定用)

  • おすすめショップ:ホームセンター、Amazon
  • 予算:約200円(ホームセンター)

キーボードの筐体(ケース)の本体とフタを固定するためのネジが必要です。 M4くらいになると太すぎるため、M2かM3あたりを購入しましょう。

この段階ではまだ筐体の3Dモデルがなく、ネジ穴のサイズや長さも決まっていないため、モデリングが完了したタイミングで購入するのがおすすめです。

今回はM3x8のネジを使用することにします。

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2.道具の準備【手配線で自作キーボードを作る講座】

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この記事は、【手配線で自作キーボードを作る講座】の第2回目です。 そのほかの記事はこちら↓

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自作キーボードに必要な道具

ここで紹介するのは3Dプリンターで筐体を作るときに必要な道具です。 アクリル板などを用いる場合には不要なものがあったり、逆に足りない道具などもあるので注意してください。

普段あまり工作をしない方は、新しくそろえる道具が多いかと思います。 ほぼ100円ショップで買えるものばかりですが、 はんだこてだけはちゃんとしたメーカーのものを買いましょう。 よくわからないメーカーのものは使いにくいですし、なんなら燃えたりしそうでちょっと怖いです。

絶対に必要な道具

はんだ付け道具一式

「はんだこて」「こて台」「はんだ」は、できれば電子工作用、または精密基板用のものがよいかと思います。

電子工作初心者で、これからはんだ付け道具を購入する方は、あまりにも安い商品は選ばないほうが無難です。 と言いつつ、私が使っているのは温度調整機能も付いていない安いはんだこて「KS-30R」です。

goot 一般電気用はんだこて KS-30R

goot 一般電気用はんだこて KS-30R

goot はんだこて台 ST-11

goot はんだこて台 ST-11

温度調整機能がついたものでは、こちらの商品などが定番のようです。

白光 ダイヤル式温度制御はんだこて FX600

白光 ダイヤル式温度制御はんだこて FX600

白光(HAKKO) こて台 633-01

白光(HAKKO) こて台 633-01

はんだは前述のとおり「電子工作用」や「精密基板用」などの、細くて融点の低いものがいいと思います。あまり熱しすぎるとProMicroが壊れる場合があります。

goot 精密プリント基板用はんだ SD-62

goot 精密プリント基板用はんだ SD-62

はんだ付けスタンド(はんだツール、サードアーム)

はんだ付けをするときは、利き手にはんだこて、もう一方の手にはんだを持っているので、両手がふさがります。 不安定なものをはんだ付けするためには固定するための道具が必要です。(なくてもなんとかなりますが、無いと結構難しい。)

自作キーボードの場合、銅線同士のはんだ付けや、ProMicroと銅線のはんだ付けなどの際にはあると便利でしょう。 工夫次第では不要です。実際私は持っていないので、木片にマスキングテープで銅線を固定してはんだ付けしてます。ただあったほうが楽なのは間違いないです。

ヤスリ、カッター(筐体の微調整用)

3Dプリンターで作った筐体は、どうしても精度が甘かったり、熱収縮で縮んだりしがちです。 最終的にはヤスリやカッターで微調整が必要になります。

ヤスリは100円ショップのダイヤモンドヤスリがおすすめです。

グルーガン(ホットメルト、ホットボンド

キーと筐体を固定したり、ProMicroのモゲ対策として使用します。 グルーガンは簡易な絶縁にも使えたりと便利です。

こちらも100円ショップのもので十分です。

ニッパー or ワイヤーストリッパー

銅線を切ったり被膜を剥いたりするのに必要です。 専用工具のワイヤーストリッパーがやはり便利ですが、100円ショップのニッパーでも十分です。

ピンセット

銅線やダイオードをはんだ付けするとき、手で持っていると火傷する可能性があるので、ピンセットはあったほうがいいです。 100円ショップのもので十分です。

プラスドライバー

筐体をネジ止めするために必要です。家庭用のドライバーで十分です。

作業用マット(カッターマットなど)

はんだこてで机を焦がしたり、部品をなくしたりしないように、作業用のマットを用意しましょう。 A4サイズのカッターマットで十分です。 ただカッターマットははんだこての熱で溶けますのでそこは注意です。

あったほうがいい道具

ラジオペンチ

あったほうが何かと便利な工具です。 3Dプリントした後のサポート材を剥がしたり、はんだ付けの際にアーム替わりにしたりできます。

ノギス

筐体の実寸を測ったり、キースイッチのサイズを測ったり。さしがねで測るよりも便利です。

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1.配列の設計【手配線で自作キーボードを作る講座】

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この記事は、【手配線で自作キーボードを作る講座】の第1回目です。 そのほかの記事はこちら↓

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配列を設計する

自作キーボードを作ろう! となったら、最初にキー配列を決めるのが良いでしょう。 配列によって、キーの数、モデリングの難しさ、ProMicroの個数などが決まってきます。

自作キーボードの配列は作る人によって様々です。 ただ、ある程度パターンがありますので、いくつか設計のためのパターンを紹介していきます。

設計作業自体は、3DCADやイラストソフトが使えるなら、それらで簡単な図を描いておくのが良いと思います。なければ紙と鉛筆でも十分です。 最終的には3DCADでモデルを作りながら試行錯誤するので、なんとなくのイメージを描いておくだけで大丈夫です。

分割型か、一体型か

自作キーボードには左右分割キーボードが多い印象があります。 実際一度左右分割キーボードになれると、使用時の姿勢が非常に楽で、通常のキーボードが窮屈に感じます。一度は体験してみることをお勧めします。 分割キーボードにする場合、それぞれのキーボードを接続するためのケーブル(一般的には3.5mmのオーディオケーブル)が必要になります。また、ProMicroも分割台数分必要になります。

もちろん、通常のキーボードと同じように、すべてのキーが1つの筐体に搭載されている自作キーボードも作ることができます。 そのような一体型のキーボードの場合、オーディオケーブルは必要ありませんが、筐体のサイズが大きくなるため、家庭用の3Dプリンターでは印刷が難しい場合があります。3Dプリントサービスに発注する場合でも、規定のサイズ内に収まっているか確認しておいたほうが良いでしょう。 ProMicroは基本的には1台でOKですが、キー数が81を超える場合はProMicroを2台使うか、IOエキスパンダーなどが必要になります。

  • 分割型
    • メリット
      • 自然な姿勢で使用できる(肩こり対策になる)
      • 1つの筐体のサイズが小さいので、家庭用3Dプリンターでも十分プリントできる
    • デメリット
      • 接続用のケーブルと、接続用の端子が必要
      • ProMicroが複数個必要
  • 一体型
    • メリット
      • 分割型より作成が簡単
      • ケーブル等が不要
      • ProMicroが1台で済む(81キーまでは。それを超える場合は2台必要)
    • デメリット
      • サイズが大きいと家庭用3Dプリンターではプリントできない
        • モデリング段階で2つに分割しておき、後から接着するなどの方法はある

Ortholinear Layout(格子配列、直交配列)か、Staggered Layoutか、それ以外か

キー配列は大まかに分類して以下の3つに分けられます。

Ortholinear Layout

格子配列、直交配列と呼ばれるものです。 その名の通り、キーがすべて碁盤のようにきれいに並んでいるものです。

参考:Ortholinear - Self-Made Keyboards in Japan

キーボードがコンパクトになるというメリットがあります。 また、単純に格子に並べるだけなので、モデルの作成なども簡単です。

Staggered Layout

通常のキーボードのように、キーが少しズレているようなレイアウトです。 また、横ではなく縦方向にズレているようなものもあります。

参考:staggered layout - Self-Made Keyboards in Japan

横方向にズレているレイアウトは一般的なキーボードと同じような使用感にできるため、乗り換えが容易です。 また、自作キーボードの特殊な配列に慣れてしまって通常のキーボードが使えない、という事態も避けられます。(とはいっても慣れると割と両方使えるようになります。)

縦方向にズレている配列は、人間の手の形あわせた自然なズレになり、キーが押しやすくなるという狙いがあります。

それ以外

上記2パターンに該当しないようなものとして、立体的な配列や、Ortholinear と Staggered を組み合わせたものなどがあります。 結局は「自分が押しやすいと思う配列」を実現するため、あまり枠に囚われず自由に配置していいと思います。

平面の配列か、立体の配列か

一般的なキーボードは、平面にずらっとキーが並んでいます。 自作キーボードでは、平面に並べるという制約はありませんので、手の形に合わせた立体的な配列を採用しているものもあります。

平面的なキー配列にする場合、アクリル板などを用いて作成することができます。もちろん3Dプリンターを用いて作成することもできます。

立体的な配列にする場合、3Dプリンターのメリットを最大限に生かすことができます。 しかし立体的に配置する場合、キーピッチ(キーとキーの距離)の計算が難しかったり、 あまりに複雑な形状は家庭用3Dプリンターでは印刷が難しいなどの問題もあります。 (3Dプリントサービスでプリントする場合は、複雑な形状でも問題ないです。)

キーの割り当て

キーの位置だけではなく「どのキーにどの文字を割り当てるか」もある程度考えておくとよいでしょう。 使いながら変更していく部分ですが、不要だと思うキーは最初から無くしてしまうという手もあります。

一般的なCtrlの位置にキーがない配列や、CapsLockの位置がCtrlになっている配列が多いようです。

今回作成する自作キーボードの配列

今回作成する自作キーボードは以下のような配列にします。 (要はErgo42のクローンです)

  • 左右分割型
  • 平面の格子配列
  • 縦4列、横7列

とりあえず平面に3DCADで配置してみました。これを草案として進めていきます。

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次の記事:

okayu-moka.hatenablog.com

手配線で自作キーボードを作る講座

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実際に自作キーボードを作成しながら、作り方を解説していく講座です。 自作キーボード初心者でも完成させられるよう、なるべく詳しく解説していきます。

この講座について

この講座は以下のような前提で進めていきます。

  • 基本的には自分が学んだことをダラダラと書いたものです。
  • 自前の3Dプリンター、もしくは3Dプリントサービスを利用して、自作キーボードを作成します。
  • 販売されているキットを組み立てるのではなく、オリジナルの配列(または既存の配列のクローン)で作ります。
  • PCB基板は作らず、電線を直接はんだ付けして、手配線(空中配線)します。
  • マイコンは Pro Micro を使います。ファームウェアには QMK Firmware を使います。
  • 3Dモデリングには Fusion360 を使います。
  • キーキャップは購入します。(3Dプリンターで作ることもできるけど、今回はスルー)
  • 読者のスキル的には、テキストエディタCUIをある程度使用でき、問題が起きても自力で調べて解決できる程度の技術レベルを想定しています。

注意事項

  • この講座を読んだからといって、すべての人が自作キーボードを作れるようになるわけではありません。
  • 必要な道具・部品の購入ではネットショップを利用していますが、その際のトラブル等の責任は負いかねますのでご注意ください。
  • アプリケーションのインストール手順、CUIの操作についてなど、自作キーボード自体にあまり関係のないところは省略しています。手順が分からなければ都度調べて対応してください。
  • この講座で作るキーボードは LEDをつけません(光りません)。 これは単に、私が自作キーボードを作る理由が 「最も自分が使いやすいキーボードを追求するため」 だからです。光っても光らなくても、使い勝手には影響ないので……

なぜ手配線?

私がPCB基盤を作ったことがないからです。

というのは半分冗談で、実際のところは、基盤がなくても作れるからです。 なくてもいいのに、わざわざ作らなくてもいいじゃん? というのが本音です。 世に色々と出回っている、アクリル版とLEDを使ったピカピカ光るキーボードにするなら必要ですが、3Dプリンターで作る場合、基盤が見えるような筐体デザインにはならないと思いますので、手配線で十分だと思います。

Gitリポジトリ

この講座のサンプルとして作成する3Dモデル、ファームウェアなどはすべて以下のリポジトリで公開しています。

github.com

また、完成後の状態はこんな感じです。

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講座一覧

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